第2章 伊達の流儀
・・・こんな状況でも顔を赤くするなんて、修行が足りないと自覚している。
胸を張って自分が"伊達政宗の女"だなどと大嘘をついたけれど、果たして松永にバレてはいないだろうか。
捕らわれている四人のうち、良直と孫兵衛も真っ赤になって「マジかよ」と信じこんでいるので、そこまでバレる嘘でもないはずだ。
・・・文七郎と佐間助は、おそらく嘘だと気づいているが、黙ってくれている。
「・・・ほぅ、とても愉快な女だ。独眼竜が実に羨ましい」
「ゆ、愉快とはなんだっ。分かっただろう? 私を代りに人質にしろ!」
「・・・私は人が嘘をついているか否かについて、なぜか容易に見破ることができる。君が嘘を言っているかどうか、それはまず置いておこう。
・・・しかし、君から企みの表情は読みとれぬ。背後に軍勢を用意している様子もなく、私に斬りかかる策があるとも感じられない」
「当り前だ。何も企んではいない」
鋭い奴。
何も企みがないというのは事実だ。
私は何も用意せず、こうして乗り込むしかなかったのだから。
「すると解せぬのだ・・・。なぜ君が人質に成り代わりたがる?何の策も、得もなく、なぜ自らを捕らえよなどと申し出るのか・・・」
「そんなの決まっているだろう! その四人を解放してほしい。それだけだ! 私の友達なのだっ・・・私がどんな目に合おうと、今ここで四人を見殺しにすることなどできない!」
精一杯の気持ちで、そう言い切った。
全部、私の正直な気持ちだ。
「「紫乃・・・」」
悔しくも涙目になってきた。
お願い。お願いだ。
私の言うとおりに、四人を解放してくれ。