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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第2章 伊達の流儀



振り向いた松永は、怪訝な表情をするでもなく、うっすらと笑っている。


「「紫乃!」」

「紫乃さん! 来ちゃいけねぇ!」



「・・・これはこれは、思わぬ客人だ。今から竜の爪を差し出すよう文を届けに遣わすところであったが・・・君が届けてくれるのかな?」


私が女だからか、武田の者と分かっている様子なのに、まったく警戒していない。


「・・・その四人を解放してほしい。」


そして絞り出した言葉に、松長はフッと笑って答える。


「竜の爪を差し出せば、すぐにでもそうしよう。」


・・・嘘だ。

この男の瞳は、嘘と欲望が渦巻いている。

六爪と引き換えにしても、この四人を助ける気などないのだろう。

もう、この男が耳を傾け、四人を助けられる方法は、一つしかない。


「・・・私が代りに人質になる。四人を解放し、私を捕らえろ。」

「紫乃さん!? 何言ってるんスか!」


これなら、四人を解放するには一番手っ取り早い。

伊達の兵が捕らわれている限り、さすがの独眼竜も悩ましく思うはずだ。

しかし捕らわれているのが武田の私であれば、独眼竜は悩む必要などない。

私には、独眼竜にとって人質としての価値すらないのだから。

あとは私が自力で抜け出せばいいことだ。
四人が人質でさえなければ、きっと私の力で脱出できる。

そうすれば、とりあえずは四人を今救うことができる。


しかし私がそう言うと、松永は解せぬといった様子で首をかしげた。


「それはなぜかな?」

「お前の言うとおり、その四人の兵を人質にしたところで、独眼竜は刀を差し出しはしない。だが私なら話は別だ。私を人質にすれば、おそらく六爪は手に入るだろう。」

「・・・? 君は独眼竜にとって、刀を差し出すに値する人間だとでもいうのかな?」

「そうだ。」


考えろ。考えろ。

考えるんだ。
私が人質になれる方法を。

この松永を欺ける言葉を。



「私は、伊達政宗の女だからだ。」



これしか、ない。


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