第2章 伊達の流儀
──なぜ今、あの四人が拐われたのか。
その理由として、いくつか思い当たらないわけではない。
なぜなら今は、甲斐にて伊達軍が療養しているのだ。
武田と伊達を攻めんとするならば、他国にとっては好機に他ならない。
・・・しかし、織田信長はこんな姑息な真似をするだろうか。
魔王であれば、もっと残虐非道で、容赦なく里へ攻めいるはず。
このやり方はどうにも解せない。
しかしそれ以外で、織田の脅威が迫る今、わざわざ伊達を攻める勢力などあるだろうか。
・・・一体誰なんだ?
─しばらくすると、屋敷の中から声が聴こえてきた。
「ちくしょー!」
「この縄を解きやがれ! 今すぐ勝負してやらぁ!!」
「お前なんか刀がなくてもボコボコだぁ!」
「やんのかこらぁ!! あぁ!?」
・・・このガラの悪い声、間違いない!
四人組だ。
屋敷の門構えの柱に隠れて中の様子をうかがうと、そこには4本の柱にそれぞれくくりつけられた四人組の姿があった。
ボコボコに殴られているようだが、まだまだ意識も気力もはっきりとしている。
とりあえず四人が無事であることに安堵したが、捕らえられていることには変わりない。
そして四人の前に立っている男、あの者が首謀者か。
「・・・あぁ、卿らが伊達の者たちだと知って落胆せざるを得ないな。これでは竜の爪は手に入らない」
余裕の笑みと、不気味な出で立ち。
あの男、知っている。
この古い庵野にずっと籠り、収集した品を愛でて暮らしているという噂の変わり者。
織田に生かされ、手の内にありながら、こうして己の欲望に生きている武将・松永久秀だ。