第1章 奥州に忍ぶ
とどのつまりは、伊達軍と足並みが揃うよう帳尻を合わせるため、テコ入れをするのが私に与えられた役目ということ。
すぐさま奥州へ向かうための準備を始めることとなった。
お館様はあのように仰っていたけれど、まだ私の中では納得がいっていない。
お館様と幸村様のお力を持ってすれば、きっと織田など敵ではないはずなのに。
私も武田の軍に加わり、織田の討伐にお力添えをしたかった。
それがなぜ、あの偉そうな独眼竜に助けを乞うようなことを・・・。
「おーい紫乃。なーに色々考えちゃってんの?」
忍仲間にしばしの別れを告げた後、隊長の佐助様が声をかけてくださった。
「佐助様・・・。いえ、重大な任務ですから、気を引き締めて行って参ります」
「ははっ、うっそだー。そんなこと思ってないんでしょ。納得いかないって顔してるよー?」
「うう、それは・・・。」
「気持ちは分かるよ。でもさ、本当に重大な任務なんだよ。最初は俺が行く話だったんだけど、俺は伊達軍には警戒されてるから務まらないっていうお館様のご判断なんだ。紫乃ならば独眼竜の信頼を勝ち取って、うまく誘導できるだろうって」
「佐助様・・・」
「だから自信持って、武田のために奥州へ行ってきて。ね?」
ポンポンと頭を撫でてくれる優しい手に、私は素直に従った。
佐助様はいつもこうして私を気にかけて下さる。
任務のためとはいえ、佐助様と離れてしまうのは心細いし寂しい。