第2章 伊達の流儀
そのころ、片倉小十郎は伊達政宗のいる広間へ戻っていた。
四人組と紫乃の身に起こっていることなどつゆも知らずに。
「政宗様。傷の具合はいかがでございますか」
「こんなもん傷のうちに入らねぇよ」
小十郎は自身に責任を感じつつも、変わらず強気な政宗に安堵していた。
しかし、奥州へ帰ったら腹を切らねば、相変わらずそんなことを考えている。
「・・・政宗様。この度は紫乃の計らいで甲斐へと立ち寄りました。里の皆の協力で、傷ついた者たちも癒えつつあります」
「見りゃわかる」
「せめて政宗様のお身体が回復されるまで、出陣はお待ちいただきたい」
他国の床に伏せることは政宗には屈辱だろう、小十郎はそう思ったのだ。
しかし当の本人は、そのことについてはそれほど気にかけてはいなかった。
「・・・アイツはどこいった?」
「紫乃なら、兵たちににぎり飯を振る舞いに行くと言っておりました。おそらく今頃厨房かと」
「・・・ハッ、まともに飯が握れるとは思えねえけどな、あの女」
「ま、政宗様。お言葉ですが、我々は少々紫乃を邪険に扱いすぎておりました。このような状況になり甲斐を頼っている以上は、紫乃にも礼を尽くさねばなりません」
小十郎がそう諭しても、政宗はまったく聞く耳を持とうとはしない。
「あいつは今は伊達軍だ。じゃじゃ馬のご機嫌とってどうすんだよ小十郎。えらく気に入ってるみてぇじゃねえか」
「・・・いえ、そういうわけではございません」
「借りは戦場で返しゃいいだろ。じゃじゃ馬ごと奥州に連れ帰りゃ、真田幸村はjealousy燃やして追ってくる。・・・魔王を倒した後のお楽しみだ」
織田を討伐した後も、紫乃を奥州に留まらせるつもりなのか、と。
小十郎は少々驚いた。
幸村と戦いたいがために、そのためだけに、紫乃を奥州へ連れていく。
─本当に、それだけだろうか。
小十郎はそんなことを考えながら、政宗を見ていた。