第2章 伊達の流儀
私は持っていた包みを差し出すと、とたんに孫兵衛は目を輝かせる。
「に、握り飯だ! 紫乃、くれんのか!?」
「もちろんだ孫兵衛。お前たちがここで見張りをしていると聞いたから、持ってきた。腹が減っただろう?
甲斐の米で炊いたんだ」
「わざわざすまねぇな紫乃さん!」
文七郎も、孫兵衛も、他の二人も。
すぐに私の手から握り飯を持っていくと、バクバクと頬張り始める。
「うめぇ!」
「当り前だ。特別に私が握ってやったのだ」
「紫乃が!? すげぇなぁ!」
美味しそうに平らげる四人に、胸がほっこりと温かくなった。
伊達軍は居心地がいい。
この四人のことも、私はとても気に入っている。
「もう食べてしまったのか。おかわりを持ってこよう。しばらく待っていてくれ」
「悪ぃな紫乃。」
城の厨房へ戻ろうと、四人に背を向けた。
───そのときだった。
ドスッ
背を向けた背後で、鈍い音がした。
それとともに、四人分のかすかな呻き声も聞こえた。
「・・・・どうした?」
何事かと振り向いたが、さっきまでそこにいたはずの四人が、いない。
独眼竜の床にさえ行かずに見張り番に徹していたはずの四人なのに。
・・・誰もいない。
どこへ行った・・・?
門の外に出て辺りを見回しても、四人の姿はなくなっている。
・・・その代わり、地面には、引きずられた跡。
「・・・まさか・・・」
四人が拐われたのはそんな、あっという間の出来事だった。