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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第2章 伊達の流儀




「・・・独眼竜。大丈夫か」


呼び掛けてみても、反応しない。

伏せられた目は、いつもの勇ましい表情とは違う、涼やかな青年のようだ。

なんだかここにいることが照れ臭くなってきた私は、黙っているのが辛くなってきた。


「・・・まったく。片倉殿が心配しているぞ。なぜ早く種子島のことを言わなかったのだ。早く目を覚まして、安心させてやらねば腹を切ってしまいそうだぞ。しかしいつもそうして眠っていれば、少しは・・・」


照れ隠しのために立て続けに喋ったところで、私は声が出なくなった。


独眼竜の目が、開いていたからだ。

な、な、な、なっ・・・


じろりと睨むような目で、こちらを見ている。


「子守歌は終わりか?」

「・・・なっ、なんだお前、起きているなら起きていると、早く言えっ・・・!」

「夢ん中までやかましい声が聴こえてきやがったからな。嫌でも起きる」

「べ、べべべつに一人言だ! 眠っていると思ったからっ・・・」


あまりの恥ずかしさに顔を熱くしていると、独眼竜は無理矢理体を起こそうとし始めた。


「ま、待て、まだ寝ていろ。」


さすがに痛そうに顔を歪ませていたので、彼の背中に手を添えて支えてやると、珍しく独眼竜はそれを受け入れて、少しだけ私に体を預けてきた。


「・・・俺はどれくらい眠ってた?」

「一晩だけだ。浅井とやりあったのは昨日のこと。・・・丈夫な体だな」

「当り前ぇだ。俺を誰だと思ってやがる」


そうは言いつつも顔を歪めていて、口には出さずとも辛いのだろう。

押さえている腹部の包帯にはじんわりと血が滲んでいる。


「・・・生きてて良かった。」


つい、思っていたことが口に出た。


すると独眼竜は表情を変えずに目を逸らし、私の腕からさらに体を起こした。

らしくないことを言ってしまい気まずくなった私も、慌てて話題を変える。


「ここは甲斐だ。片倉殿はお館様のところへ行っている。昨日はずっと心配して側を離れなかったんだぞ。待っていろ、今皆を呼んでくる」

「・・・ああ」


触れていた独眼竜の背中は、何か大きなものを背負っているように固かった。

鍛練の証の傷があちこちにあって、体温も熱い。

広間を離れても、その感覚が、手に残っていた。


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