第2章 伊達の流儀
「・・・紫乃?どうしたのだ?」
「・・・私は、何もできませんでした」
独眼竜を誘導し、ときには退かせること。
それが私に与えられた使命だったのに。
あの状況で、徳川と浅井の動きに予測がたてられたのは私だけだったはずだ。
武田、伊達、どちらの情報も入ってきていた私なら、鉄砲隊が独眼竜に向けられることなど、よく考えれば分かっていたこと。
それなのに、止められなかった。
「お館様に顔向けできません。私はただ独眼竜に着いていっただけで、本来の役目は何一つ果たせなかった。・・・そしてこのように、独眼竜に怪我を負わせてしまった。こうならないように、私が送られていたのに」
「紫乃・・・。」
どうして幸村様の前では、こうして弱音を吐いてしまうのだろう。
慰めてくれるからといって、いつまでも甘えていては駄目なのに。
「某は、あの種子島の中、紫乃が無事で甲斐に帰られたことだけで十分でござる。伊達殿のことも、強靭な武人であられるゆえ気に病む必要はござらぬ」
「幸村様・・・。」
「・・・それに某は、まだ少しばかり、伊達殿の療養が続けばいいと・・・さすれば紫乃は、まだ甲斐に・・・」
「幸村様?」
「あっ、いや、何でもござらぬ!」
今日の幸村様はよく顔を赤くする。