第2章 伊達の流儀
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夜が明けた。
「幸村様!」
数日ぶりに見た幸村様に、私は思わず顔が綻んでいた。
「紫乃! 伊達殿の様子はいかがでござるか!?」
「眠っていますが、無事です」
夜中、甲斐に着いてから一晩様子を見ていたが、徐々に回復してきている。
血が不足しているため顔色も良くないが、呼吸は安定し、眠りながらも時折痛みに顔を歪ませている。
それを確認してから、私はこうして幸村様に顔を見せに来たのだ。
「・・・独眼竜は丈夫なようです。安心しました。今は片倉殿がついております」
「そうでござったか・・・」
幸村様はホッとした表情を見せた。
この素直な表情の移り変わりを見ていると、いつだって幼い頃を思い出す。
「幸村様、本多忠勝との戦を見ておりました。・・・本当に、強くなられましたね。」
「紫乃・・・」
お褒め致したのが照れ臭いのか、幸村様は顔を赤くしている。
「・・・すまぬ、ふ、不謹慎でござるな、某。伊達殿がかような状況であるのに、このような心持ちでは・・・」
「ふふ、そんな、幸村様が奮闘なされたのには違いないのですから」
「・・・紫乃は、その・・・伊達殿とは、どうでござるか?」
「え・・・?」
どう、と聞かれても・・・。
うまくいっているのか、いっていないのか、自分でもよく分からないのだ。
そばにいることを認めてはもらえたものの、私の話など聞いてはもらえない。
奴のことを徐々に分かってきてはいるものの、力になることはできていない。
・・・今回のことではっきりしたのは、私は伊達軍に入ったはいいものの、何の役目も果たせなかったということだ。