• テキストサイズ

【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ





──「お館様!! 幸村様!! おられますか!!紫乃でございます!!」


武田に着くなり、私は挨拶もせずにその門をくぐった。

傷ついた伊達軍を中に入れ、そして意識のない独眼竜を片倉殿と抱えながら大声で叫んだ。

すると、音もなく木の葉が舞い、城の入り口に佐助様が現れた。


「佐助様っ・・・!」


私はあまりの安堵に、佐助様の胸の中に駆け寄っていた。


「佐助様っ、佐助様っ・・・あの、独眼竜がっ・・・」

「紫乃、大丈夫。こっちだ。一通り様子は見てたから。お館様にはもう話は通してある」

「佐助様っ・・・」

「落ち着いて。右目の旦那と一緒に、ほら、竜の旦那を広間に運んで」

「は、はいっ・・・」


佐助様は慌てふためく私を見て呆れてしまったかもしれないが、私は冷静ではいられなかった。

独眼竜から血がしたたり落ちるたびに、彼の命が削られていくように感じたのだ。

そう思うと、なぜか、胸が締め付けられるように辛かった。


「片倉殿・・・」


でもきっと、それ以上に片倉殿や伊達軍の皆のほうが辛いはずだ。

私は辛さを分け合うように、片倉殿の手を握った。


「・・・政宗様っ・・・」


そう呟いた片倉殿は、この手を握り返すことはなかったが、振り払うこともしなかった。

代わりに、広間にて治療を受ける独眼竜の隣に、深く深くうなだれて座り込んでいた。


奥州で伊達政宗と出会ってから、私はまだ数日だ。

その竜のような研ぎ澄まされた蒼い背中は、まだ見慣れない。

この男は自分勝手で、己の道を行くだけの男。

それでも、こんなに仲間に思われて、また仲間を大事にしている。

何より、幸村様の闘志に火をつけた好敵手。

私がこんなに胸が苦しいのは、この男はきっと、今死んでしまっていいような男ではないのだ。


死なないで、独眼竜。




/ 147ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp