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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ




────


来た道を引き返すが、思った以上に傷ついた者がいる。

このまま奥州まで戻ったとして、この者たちの手当ては間に合うのだろうか。

自分の足で駆けている私は先頭の独眼竜に近づくと、走る馬の足下から、彼に聞こえるように言った。


「独眼竜! 甲斐へ寄ろう! お館様は傷ついた者の手当てをして下さるはずだ!」

「・・・」


他国の情けを受けるのがそんなに嫌なのか。

奴は腕を組んで馬に揺られたまま答えようとしない。


「独眼竜。背に腹は代えられぬはずだ。仲間を思うならば、私の話を受け入れてくれ。」

「・・・」


それでも返事をしようとしない独眼竜に、今度は片倉殿が語りかけた。


「政宗様、ここは甲斐を頼りましょう。」

「・・・」

「・・・政宗様?」


・・・独眼竜?

なんだか様子が・・・


「なっ・・・!?」


次の瞬間、走る黒い馬から、独眼竜の体はふわりと宙に浮いた。

そのまま馬だけが先へ進み、独眼竜の体は後ろへ落ちていく。


「政宗様!?」

「独眼竜! うわっ・・・!!」


ちょうど独眼竜の馬の後ろを走っていた私に、その体は容赦なく落ちてきた。

突然のことにとても反応できなかったが、倒れてくる独眼竜の下敷きになる形で、私は必死でその体を受け止めていた。


「独眼竜! どうしたのだ!?」


その体からは一切の力が抜けていた。

重い鎧を起こして、独眼竜の体を私の腕の中にどうにか抱え込む。

・・・呼吸はあるが、意識がない。


「「筆頭!!」」

「政宗様!」

「か、片倉殿っ・・・! これを見ろ! ・・・種子島が・・・」


独眼竜の上半身を抱える私の装束に、じわじわと彼の血が滲んでいく。

出血は腹部から。

あのときの鉄砲が当たっていたのだ。


「片倉殿、甲斐へっ・・・甲斐へ行こう! 早くしないとっ・・・」

「・・・あ、ああっ・・・」

「筆頭っ! そんなっ」

「筆頭!!!」


嘘だ。

独眼竜、独眼竜。

どうしてこんなことにっ・・・。


『アンタいいな。上等だ。』


お前が死んだら、日ノ本はどうなる。

絶対に死んではだめだ。


「幸村様っ・・・幸村様っ・・・おねがい・・・っ」


甲斐へと走る私は、ずっと口に出して願っていた。

─幸村様、独眼竜を助けて。


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