第1章 奥州に忍ぶ
──着実に敵に斬り込んで、道は開かれるかに思えた。
しかし、時が経つにつれ、私はひとつ気になることがあった。
武田と戦う徳川が、この数の不利を承知で戦を始めたのは、なぜだろう。
もちろん本多忠勝の存在に頼る気なのかもしれない。
でも、こんな序盤で切り札を出すなんて・・・。
それ以上の切り札となれば・・・そう考えていくと、私には確信に近い仮説が浮かんだ。
もしかして、種子島が用意してあるのではないか、と。
織田の鉄砲隊は各地を殲滅してきた。
それが今回の戦で加勢してきてもおかしくない。
それをアテにしていたからこそ、徳川家康はお館様に兵を向けたのではないだろうか。
・・・それなのに、鉄砲が来ない。
すでにその期は過ぎているように感じる。
このままでは徳川軍は壊滅してしまう。
もし、織田の鉄砲隊が徳川を加勢しないのだとしたら、
だとしたら・・・まさか・・・
「片倉殿!!」
浅井と激闘する独眼竜のすぐ側にいた片倉殿を大声で呼ぶと、彼はこちらを見た。
「織田の鉄砲隊が、こちらへ来るかもしれぬっ!浅井を加勢しに来たら無傷ではすまない!!ここは一旦っ・・・」
そう言ったときだった。
片倉殿は私の言葉を理解して目の色を変えたが、時はすでに遅かったのだ。
すでに前方に迫っていた織田の鉄砲隊が、銃口をそろって、独眼竜へと向けていたのだ。
「政宗様!!」
「独眼竜!!」