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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ




「ぐあぁっ・・・!」


深呼吸をしたあと、相手の急所に一撃を食らわせた。

その感触はあまり好きではないが、仕方ない。


「すげぇや紫乃さん! やるじゃねーか!」


文七郎は私のことが心配だったのか、私が敵を倒したことを確認してから側を離れていく。

どこまでも優しい奴だ。


・・・あれ?


「文七郎っ!」

「・・・へい?」


文七郎の背後に足軽が迫っていた。

そいつは馬の死角になるように動いている。

文七郎は気づいていないが、足軽の刀はきっと馬の上の文七郎の腹部まで届く。

馬に乗ったままでは、気づかないはずだ。


「・・・文七郎! そこを動くな!」

「へ?」


飛び刀を文七郎に向かって振るった。

刃が柄から離れて、彼の方に真っ直ぐ飛んで行く。

近くにいた伊達の兵は、私が文七郎に攻撃していると思ったようで、止めようと怒鳴り声をあげた。


「おい武田! テメェ何してんだ!」


文七郎に刃を向けたと思われているが、私はかまわず続けた。

優しくしてくれた文七郎を、私の前で死なせたくない。


「#name#さんっ・・・? そんなっ・・・」

「私を信じろ! 文七郎! 動かずにそのままでいろ!」


刃が彼の元までとどいたところで、私はひょいっと柄に力を入れて、飛び刀の軌道を変えた。

すると文七郎に向かっていた刃はくるっと向きを変え、狙い通り、馬の足下に隠れていた浅井兵へと突き刺さったのである。

兵から真っ赤な血が吹き出すと、文七郎はやっと自体を把握した。


「紫乃さん、あんたっ・・・助けてくれたのか?」

「よそ見をするな! 伊達は尾張へ行くんだろう!?
文七郎がこんなとこで死んでどうする!」

「・・・紫乃さんっ・・・すまねぇ!!」


私が刃を向けたとき、疑ってしまったことに罪悪感があるのか、文七郎は涙目になって目を瞑った。

そして再び目を開けて、勇ましいその目で、前を見据え直した。


「救ってもらったこの命、何としても尾張まで!」

「その意気だ文七郎! 私も助太刀する!」


今はこれで正しいのだ。

邪魔をする浅井を倒す。

それが伊達の目的ならば、私もそれに従う。

今は仲間である伊達軍を守るために、この刃を飛ばすだけだ。


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