第1章 奥州に忍ぶ
迫ってくる浅井の兵たちに対して、伊達軍は雄叫びを上げながら臆せず立ち向かっていった。
武田の軍とともに出陣したことしかない私は、味方の景色がいつもと違うことに少しだけ戸惑っていた。
「紫乃さん! つかまって!」
文七郎は私を背に隠すようにして刀を抜くと、馬に乗った敵を着実に倒していった。
「文七郎! 私は一度降りて加勢する! これでは戦いづらいだろう!」
「大丈夫だ乗っててくだせぇ! あぶねえから!」
「いや、降りる!」
私のせいで文七郎に何かあったりしたら目覚めが悪い。
思う存分いつもの力で刀を振るってもらわなくては。
すぐ側で繰り広げられている独眼竜と浅井長政のぶつかり合いは、激しさを増している。
浅井は織田に屈したと聞いていたが、思っていた以上に強い。
信念を感じる剣だ。
──でも、独眼竜は、それ以上に強い。
幸村様の話は真だ。
「よそ見するなよ!女ぁ!」
そのとき、浅井の騎馬兵が私に向かって突撃してきた。
私は覚悟を決めて、腰の飛び刀を構える。
戦わねば。