第1章 奥州に忍ぶ
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駆け抜ける伊達の軍勢は長篠に差し掛かっていた。
すでに爆風と炎が見えている。
(あれは武田の軍と徳川か・・・)
見るからに、状況は武田の有利だ。
これなら、幸村様もきっとご無事だ。
だいたい幸村様が簡単にやられるはずがない。
どんな相手でもその炎の槍で打ち勝っておられるに違いない。
しかし、横目で見た景色の中に、幸村様はいた。
相手の武人は私も初めて見る、あれは・・・
本多忠勝。
戦国最強と謳われる武人が相手とは・・・。
「あ、あの紫乃さん?どうかしたんで?」
「えっ・・・あ、いや、なんでもない文七郎・・・」
大丈夫。
幸村様なら、大丈夫だ。
このまま伊達はこの長篠を通りすぎる。
私はそれに着いていかなければならないのだから。