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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ




彼も血の気の多い伊達軍のはずだが、物腰が柔らかく気弱な男である。


「どうした文七郎」

「いやぁ、紫乃さん、このままじゃ置いてかれちまうじゃねえか。馬に乗ってくれ」

「なっ・・・」


文七郎は馬の上から手を差し出してきた。

ありがたい、ありがたいのだが・・・ここで乗せてもらうのは気が引ける。


「だ、大丈夫だ。気遣い恩に着る」

「そう言わずに。これから戦に出るってんで、こんなとこでへばっちゃ勿体ねえ。ほら、乗った乗った」

「文七郎・・・」


私はしばらく考えて、そして、文七郎の手を取った。

グッと引っ張られて、私も体を浮かせて彼の後ろに跨がった。

脚がスッと楽になる。


「すまない」

「いやぁ、気にしないでくだせぇ」

「文七郎は優しいな。これから戦場へ出向くという緊張の中でも、私のことまで見ていてくれたのか」

「・・・そ、そんなはっきり言わないでくれよぉ、俺も馬に女子乗せるなんざ初めてで、恥ずかしいんだから・・・」


伊達の者は皆、人情がある。

素直で優しく、そして少し意地っ張りだ。

私は戦がしたいとは思わない。

それでも、この者たちが、傷つくのを黙って見ている気はない。

この身の限り加勢する。

戦場になれば、幸村様をお守りするときとなにも違わずに・・・

独眼竜と約束したのだから。

伊達の仲間に入れてくれと。

それは嘘ではないし、覚悟あっての言葉だった。

何より、この者たちは、もう私と無関係ではない。

私も戦うことになる。

伊達軍として。


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