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【戦国BASARA】*月夜の盃*【R18】

第1章  奥州に忍ぶ




軍議は終わり、ついに明日から尾張へ向かうこととなった。

私は夜のうちに配下を使い、お館様の耳にも入るよう手配をした。

甲斐を過ぎたころに幸村様も尾張を目指すはず。

明日発てば数日後には甲斐を通る。

まだ離れて間もないのに、ひどく久しく感じるのはなぜだろう。



──────



「テメェら! 魔王の首を取りに行くぜ!
覚悟はいいか!」

「「イェー!!!!」」


・・・なんとうるさい軍勢なんだ。

もっと気高く雄々しい出発はできんのか。

走り出してしまった馬たちの波に乗って、私も走り出した。

忍装束は足元に細工があるとはいえ、このまま尾張まで着いていくのは難儀なことだった。

先頭にいるのがお館様や幸村様なら喜んで着いていくのだが・・・。

私は速度を上げて、独眼竜のそばまでにじり寄った。

途中で寄り道をされては困るので、釘を刺しておこう。


「よぉ忍。尻尾巻いて帰ったかと思ってたぜ」

「そんなわけないだろっ、軍に加わることを認めた己の発言を忘れるなっ!」

「相変わらずやかましいな。長旅になるんだ。もっとcoolにいこうぜ」


馬に乗って涼しげに風を受けている独眼竜。

片倉殿も、もう私と此奴のやりとりには慣れたのか、いちいち口を出さなくなった。

私はといえば、この先の長い道のりを思うと、すでに足がもつれてきている。


「どうした! 息が上がってるぜ。アンタはハイキングでもしながらゆっくり来な。」

「う、うるさいっ、これくらい何でもないっ」


そう言いつつも、だんだんと速度は緩んでいき、独眼竜と片倉殿が走る先頭からは離されていく。

仕方ない、飛行忍具を使うか・・・。

・・・いや、これはこんなことのために使ってはだめだ。


「紫乃さん」


馬の波に追い抜かされていき、軍勢の中程のところまで離されてしまったとき、とある馬の上から声をかけられた。


「文七郎!」


よく話す四人組のうちのひとり、文七郎だ。


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