第1章 奥州に忍ぶ
言いきった。
ずいぶんと幼稚な言葉になってしまったが、全くの嘘というわけでもない。
すると、独眼竜はニヤリと笑って、私と同じ目線まで腰をおろした。
顔をあげると独眼竜の射るような瞳が、すぐ目鼻の先にある。
「アンタいいな。上等だ」
頭をぐしゃぐしゃと撫でられそうになるが、その手はそうされる前に振り払った。
「や、やめろ! 馴れ合いはしない!」
「ハッ、とんだじゃじゃ馬が転がりこんだもんだな。OK,軍議に出な。出たところでアンタの意見を聞き入れる気はねぇけどな」
「本当か? それでもかまわない! 礼を言うぞ、独眼竜!」
良かった。
とりあえずは軍議に出るところにこぎつけることができた。
しかし改めて思うが、この奥州での任務、今までの任務とは全然違う。
こんなにも人の心の内を考え、そこへ潜り込まんとするのは初めてだ。
人の心は、自分の要望だけでは変わらない。
相手の心を動かすためには、まず私の心を真のものにすること。
伊達軍を好きだという気持ちを、本当のものにするということが必要だ。
・・・お館様は、いつも私に適切な試練を下さる。