第1章 奥州に忍ぶ
「伊達軍がどう動くのか知っておきたいのだ」
「んなもんわざわざ軍議に出なくても教えてやらぁ。尾張に突っ込むに決まってんだろ」
「う、うむ、そうなのだろうが・・・」
やはり尾張に向かうのか。
でもその経路も知っておかなければならない。
配下の忍の情報では、徳川には挙兵の気配があるとか。
包囲網に加わらぬときは、伊達の行く手を阻むはず。
徳川は武田が食い止めて、伊達にはそこを抜けてもらわなければならない。
・・・もう、こうなったら・・・
「独眼竜」
私は大きく深呼吸をして、その場に片膝をついた。
頭を下げて、お館様の面前と同じように、伊達政宗の前に膝をついたのだ。
「♪~、何のマネだ?」
口笛を吹いて私を見下げる独眼竜。
ああ、悔しくて死んでしまいそうだ。
お館様や幸村様以外の者に、このように乞わなければならないなんて。
「私を受け入れてほしい。一時的とはいえ伊達軍に加わるという覚悟を持ってここへ来たのだ」
「・・・」
「もちろんお館様の画策も持ち込んでいる。意図がないと言えばそれは嘘になる。・・・それでも!私は伊達の邪魔はしないし、不利になることは絶対にない」
もっとだ。
もっとこの軍に忠誠を誓う言葉を選ぶんだ。
「独眼竜! 私はお前の軍が好きなんだ。ここにいる間は私を仲間に入れてくれ」