第1章 奥州に忍ぶ
「と、ところで良直、伊達軍はいつまでここに留まるんだ?」
「今日軍議が開かれっからな。そこでの筆頭のご決断しだいだぜ。明日すぐにでも尾張に発つかもな!」
「・・・そうか。今日の軍議、私も出てみるとしよう」
試しにさらっとそう言ってみたが、予想通り良直は困ったように表情を崩した。
「そ、そりゃあどうだろうな・・・。紫乃はいいやつだけどよ、伊達軍ってわけじゃねぇから・・・さすがに軍議に出るのは片倉様が許してくれねーかもな」
「そうか・・・ん? 片倉殿だけか? 独眼竜は許すと思うのか?」
「まあな、片倉様は用心深いからな。でも筆頭はそこらへんちょいと適当なんだ」
なるほど。
内部の事情を知るには、独眼竜に直接当たったほうが効率的かもしれない。
「良直。色々話してくれてありがとう」
「いいってことよ! 何でも聞きな!」
「ああ。・・・良直がいてくれるおかげで、ここでも心細くない。お前を見ていると伊達軍が本当に良い者たちなのだと分かる。
それじゃあ、私は独眼竜に直談判しに行ってくるから、また軍議でな!」
「・・・・・お前、本当そういうこと天然で言うんだもんなぁ」
良直はボソリと何か言ったが、よく意味が分からなかった。
尾張にどう攻め込むのか知るには、今日の軍議は絶対に参加したいところだ。
忍び込んで盗み聞いても良いが、もしお館様の考える動きと違うようなら私がなんとかしなければならない。
それにはやはり、正当に参加せねば・・・。