第4章 恋の残り香
──そして唇はやっと離されていく。
それとともに、熱い吐息も遠ざかっていく。
名残惜しくてゆっくりと目を開けると、先程まで私を食っていた唇が、今度はニヤリと笑っていた。
そして、その唇が言ったのだ。
「・・・ハッ、アンタやっぱり、俺に惚れてんじゃねーか」
・・・・。
・・・・。
・・・は?
・・・はぁ───!?
「な、な、な、なんだお前!! いきなりこんな破廉恥なことをしてきて、惚れたも何もあるか !馬鹿!!」
「テメェこそ何言ってやがる! kissひとつで大人しくなりやがったくせに、今更惚れてねぇとか言うんじゃねえだろうなぁ!?」
「ほっ・・・ほ、ほ、惚れてないっ!!」
「嘘つくんじゃねぇ!」
「うるさいっ! 嘘なものか!」
こいつ、何が何でも私に参ったと言わせる気なのか。
そんな手に乗るか!
私は甲斐へ帰るのだぞ。
ここで流されてなるものか。
──こうなってはもう、私は首を縦に振ることはない。
甲斐に帰るという決意を、意地でも押し通すつもりだ。
「・・・わかった」
すると政宗殿はポツリとそう言った。
しかし、その目は何も分かったようには見えない。
「アンタが甲斐に帰ろうと、俺は手放す気はさらさらねぇ。・・・この俺を忘れられるもんなら忘れてみな」
─ドクン─
「・・・望むところだっ!」
この竜の目を見ていると、吸い込まれてしまいそうになる。
私の決意などすぐに揺らいでしまう。