第4章 恋の残り香
「なっ・・・!」
皆の前で堂々と私を掴んだのは、政宗殿だった。
「紫乃。ちょっと顔貸しな。テメェにはじっくり話すことがある」
四人組や、片倉殿。
佐助様や集まっていた兵たち。
皆の視線は私へと向けられた。
それが恥ずかしくて恥ずかしくて、私はどんどん真っ赤になっていく。
恥ずかしさから逃れようと、ジタバタと彼の手を振りほどこうと抵抗してみせた。
「な、何も話すことなどないっ!」
「・・・俺がこのままアンタを甲斐へ返すと思うのか?」
「っ・・・」
相変わらず強引な振る舞いだが、悔しくもまた私は赤面してしまう。
「・・・か、返してもらわねば困る! 私は武田の忍だ!」
「今更何言ってやがんだ。今ならあの時、本能寺でアンタが言いかけたことを聞いてやるぜ」
あのとき・・・
─『政宗殿っ・・・私は、私は、政宗殿のことがっ・・・』─
あのときの言葉の、続きは・・
「・・・っ・・・私は、政宗殿のことがっ・・・」
「・・・俺のことが何だ?」
「政宗殿をっ・・・」
私は、甲斐に帰らねば。
「政宗殿のことを、一人の武人として尊敬していた! それだけだ! 他に伝えたいことなど、何もない!」
この想いに、蓋をする。
「・・・・あ"ぁ"?」