第4章 恋の残り香
────富嶽にいる紫乃も、その様子を目にしていた。
元親は、立ち尽くして天守を見ている紫乃の頭を、クシャッと掴むように撫でる。
重く温かい手。
紫乃はその手に、戦いの終わりをひしひしと感じていた。
「勝ちやがったなぁ、あの兄さんたち。大したもんだ。・・・紫乃。お前さんもよく頑張ったじゃねえか」
「元親・・・」
「お前さんの弾があの蒼い兄さんに当たったときはさすがにこの鬼も焦っちまったが・・・なるほどな、丈夫な野郎だぜ」
「・・・っ」
「・・・なんだ紫乃、泣いてんのか!?」
「・・・泣いてないっ・・・」
紫乃の胸はいっぱいだった。
自身の主が手を組み、あの魔王を倒したのだ。
嬉しくて嬉しくて、涙が止まらない。
「元親! 私、行ってくる!!」
「おう! 労ってやんな!」
富嶽から飛び降りて、城へと向かう。
大きな歓声が近づいてくる。
皆の顔は喜びに溢れていた。
まるで日ノ本全土を賭けた戦の後とは思えないほどに。
やっと城内の人だかりにたどり着くと、紫乃に気づいた四人組が駆け寄っていく。
兵たちは、政宗と幸村が天守から降りてくるのをここで出迎えようとしているのだ。