第4章 恋の残り香
「見てみな紫乃。誰か天守にたどり着いたみてぇだ。こっからじゃ赤鬼と青鬼ってことしか分からねぇなぁ」
「本当か!?」
元親を押し退けて甲板に乗り出した。
目を凝らして城の頂上を見ると、確かに二人の武将が天守を破って飛び込んで行った様子が見えた。
「あそこに魔王がいるのか・・・あの二人なら、必ずっ・・・!」
「・・・お前さんの想い人は、あのうちのどっちだ?」
「!? い、いや元親、ち、違っ・・・」
「ハハハ! どっちにしろ強そうな奴らじゃねぇかぁ!」
元親は援護射撃に戻った。
私はといえば政宗殿と幸村様から目が離せない。
心配していないとはいったものの、魔王の禍々しさはこの世のものとは思えないのだ。
乗り込んできた二人に魔王は応戦している。
不安定な瓦屋根を足場に、軽々と二人を相手にするなんて・・・。
「っ!?」
・・・政宗殿、腹を押さえている・・・
もしや傷が開いたんじゃ・・・
「・・・あの鬼ども、苦戦してやがるじゃねぇか」
「!」
元親にそう言われ、一気に怖くなった。
負けるはずがない、先程までそう思っていたのに・・・。
「も、元親っ・・・どうしたらいいっ・・・?」
「どうもできねぇさ。あいつらがふっ掛けた喧嘩だ。俺は俺のやんなきゃなんねぇことをやる。あとはあの野郎ども次第だろ」
「で、でも・・・」