第4章 恋の残り香
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城の麓で交戦する伊達・武田軍と織田軍。
富嶽の応戦により鉄砲部隊を抑えられた織田軍だが、その兵の数は優勢だった。
不安定な山の城も、織田軍には地の利がある。
「片倉様ぁ! 城からまだ別動隊の兵がどんどん出てきます!」
「ひるむな! 政宗様が魔王を討ち取るまで泣き言は許さねぇ!」
「へ、へぃっ・・・!」
数の不利に、伊達・武田軍には疲労の表情が滲んできた。
「おーい! まだ諦めるのは早いぜ!!」
──そこへやってきたのは、風来坊・前田慶次だった。
「前田!?」
「よぉ竜の腹心! 微力ながら、この前田慶次も助太刀させてもらうよ! それに気づいてるか? 俺だけじゃねえ! 後ろを見てみな!」
慶次に言われるがまま、軍勢は自分たちの背後を振り返った。
──そこには、伊達でも、武田でも、織田でもない。
とてつもない数の軍勢がやってきていたのである。
「ま、前田! あれはっ・・・」
「そうさ。上杉に浅井、朝倉に徳川。海からは長曾我部に対岸からは毛利。
ここに、織田包囲網の完成なり!」
背後に広がる、何色もの軍勢。
安土山を死角なく包囲する、国の境なき兵士たち。
───それは、紫乃のいる富嶽からも見えていた。
(お館様っ・・・見ておられますか・・・! あなた様の夢見た織田包囲網が・・・現実のものにっ・・・)
その瞬間、誰もが確信したのだ。
織田に勝つ。
織田討伐のために一つとなった日ノ本に、できぬことなどないのだと。