第4章 恋の残り香
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「お、おい元親! そんなに砲撃したら味方の兵に当たってしまうではないか!」
富嶽は一斉に攻撃を始めた。
城の入り口にたどり着いた武田や伊達の軍勢は、高くそびえる門に足留めされていた。
元親はここからその門を破ろうと砲弾を放ったのである。
「これが俺たちのやり方よぉ! 味方の助太刀に当たっちまうような奴はどのみち城ん中でお陀仏だぜ!」
「無茶を言うな元親! 本当に粗い奴だな!」
門の前にはきっと幸村様と政宗殿がいる。
でも、私は二人のことは心配していない。
あの二人が倒せぬ敵などいないと信じている。
「慶次!どこへいく!」
慶次はひらりと富嶽を降りた。
大きな体で、軽やかに身をこなす。
「こうしちゃいられねぇ! 俺も混ざってくるのさ! 紫乃は元親とここにいてくれ! 海からの砲弾も止んじゃ困るんでな! 頼んだよ!」
「ま、待て慶次! 私も行く!」
「待ちな紫乃」
元親に肩を掴まれた。
ひょいっと体は要塞へと戻される。
「なんだ元親!」
「聞いてたろう? お前さんはここで、俺と城を撃ち落とすんだ。見たところ結構な怪我してるじゃねぇか」
「心配は無用だ! このくらいなんてことはない!」
「・・・お前さんの想う男に代わって、今送り出すわけにはいかねぇぜ」
「元親っ・・・」
「この海から城を狙うことも、任された包囲網の一端よ。手を貸しな」