第4章 恋の残り香
「・・・政宗殿が紫乃を想う心、それは十分理解致した! しかし、それは紫乃自身が決断すべきこと。某に申されるのは筋違いでござる」
幸村の言葉を聞くと、政宗は大きく舌打ちした。
「shit・・・! んなことが聞きてぇんじゃねーんだよ! テメェはどうなのか聞いてんだ、真田幸村!」
恋敵に、自分の気持ちをさらけ出せと言われ、冷静でいられるわけはない。
自分の気持ちなどよく分かっているけれど、幸村はそれを誰かに言葉にしたことはなかった。
ましてや、紫乃の想い人である、政宗になど。
「某はっ・・・」
・・・しかし、彼は思ったのだ。
これは、男と男の勝負。
大切なものを賭けた、男同士の戦なのだ。
「某とて、紫乃を想う心は同じ! 政宗殿に渡すわけにはいきませぬ! 魔王が首、この幸村が獲ってみせましょうぞ!」
「フッ、言うじゃねぇか! その意気だ! 行くぜ! 真田幸村ぁ!」
紅と蒼の二つの炎は、城を駆けのぼっていった。
二人の表情は晴々しいものだった。
男と男の、命を賭けた合戦。
紫乃は知るよしもない。
だが、二人の男の心は、今、確かに一つになったのである。