第4章 恋の残り香
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二人と、色んな話をした。
これから戦に向かうのだが、そんなことは忘れてしまうほどの安心感。
二人とも、本当に良い奴だ。
「・・・そうか、元親は毛利と長年戦ってきたと聞いていたが、毛利元就とはそのような人物なのだな」
「あちらさんは卑怯な手も使うし、いけ好かねぇ態度もとってくる。・・・けど、勝ちてぇって思うんだよ。心からな」
「・・・そうか」
・・・なんというか、元親と話していると、不思議な気持ちになってくる。
この男、少しだけ、政宗殿に似ているのだ。
「・・・? どうした紫乃。顔が赤いよ?」
慶次と夢吉に覗き込まれてしまい、私は慌てて弁解する。
「あっ、な、何でもないのだっ・・・その、元親が、知り合いに似ていてっ・・・」
私は相変わらず阿呆だ。
我ながら、正直にしか物を話せないのだろうか。
「ははっ、それって、紫乃が恋してる人にかい?」
隠しきれずにさらに顔を赤くした私に、慶次は嬉しそうに頭を撫でてくる。
「皆がそうやって恋の花を咲かせる、そんな世になればいいのにな。・・・なあ紫乃、元親に似てるんじゃ、すっげえ良い男なんだろうな。お前さんの想い人は」
「・・・っ・・・」
恥ずかしすぎて元親の顔が見られない。
あぁ、こんなことで顔を赤くするなんて、本当に修業が足りぬ。
・・・政宗殿のことを思い出しただけで、こんなに・・・。
「紫乃の惚れてる男に似てるってんじゃ、光栄なこったぜ。どうだい、ここはひとつこの鬼も試してみるか?」
「も、もう! 元親っ! からかうのはよしてくれ!」
乗りの良い冗談で返してくれた元親は、私の表情がコロコロ変わるのを面白がっている。
この二人と話すのは楽しい。
こんなときでも、他国の者と友情を交わすことができるのだな。
「元親、慶次!安土山が見えてきたぞ!」