第4章 恋の残り香
「今、安土山の城を落とそうと、武田と伊達は共闘して向かっている。しかしあの城はそう簡単には落ちない。長曾我部殿の力が必要だ」
「まかせときな」
「よぉ元親。そちらさんは誰だい?」
長曾我部殿と話していると、要塞の甲板からもう一人、男が降りてきた。
派手な格好をして、ドでかい刀を背負っている。
人の良さが表情に表れている。
なんだかホッとする人だ。
「武田軍より参りました。紫乃と申します」
「武田んとこのお嬢さんか。俺は前田慶次。こいつは夢吉」
前田慶次は、自分の懐から顔を出す小さな猿を指差した。
「貴殿が前田殿か。お館様から聞いておりました。夢吉殿も、お初にお目にかかります」
夢吉殿にペコリと会釈をすると、前田殿はそれが面白くて仕方なかったのか、大層機嫌の良い様子で話を続ける。
「ははっ、あんた良い奴だな。武田が独眼竜を引き入れてくれおかげで、包囲網は完成しそうだ。西の方は、見ての通り元親は快諾してくれた。毛利も今は魔王さんを倒すことが得策だと踏んでるだろうし。なぁ、元親」
「おぅ、背面の海はこの長曾我部の富嶽にまかせときな」
ずいぶんと仲の良い様子で、前田殿と長曾我部殿は語らっている。
前田慶次。
この男が西の勢力を束ねてくれたおかげで、魔王の背面をとることができるのだ。
「そうだったのか。すでに快諾しているとは知らず、乗り込んでしまってすまない。・・・船も少し壊してしまった」
「気にしなさんな。紫乃っていったな。安土山へ、このままあんたも乗っていきな」
「かたじけない」