第4章 恋の残り香
ついに海の上空へ到達した。
しかし止まらない。
先の見えない海の上をただ進んでいくだけで、そのうち凧が力尽きて落ちるのを待つしかないのだろうか。
ああ、今度は地面に激突するのではなく、海に飲み込まれることになろうとは。
───そんなことを考えていたときだった。
海上に、何か見えてきた。
鬼の鳴き声のような轟きがそこから聴こえてくる。
「なんだ・・・あれ・・・?」
見えてきたのは、とてつもない大きさの海の要塞。
動く城とでもいうのだろうか、その姿は今まで見たこともない、強さとおぞましさ、そして晴々しさを感じる大要塞だった。
男たちの騒ぐ声も聴こえてくる。
「まさか・・・」
西海の鬼の棲み家。
まさかあれが、そうだというのだろうか。
・・・だとしたら、噂に違わぬ圧倒的な迫力だ。
あんなものを目の前にして、魔王とてまともにやりあう気など失せてしまうはずだ。
「富嶽・・・!」
いちかばちか、私は賭けてみることにした。
政宗殿で一度経験しているから、要領は得ている。
あの要塞めがけて落ちていけばいい、そうだ簡単だろう?
全身の力を、凧の右側へとかけて、その方向を変えた。
「わっ、ちょ、ちょ、・・・・ぎゃぁ─────!!!!」
そして落ちていくのだった。
大要塞・『富嶽』へ。