第4章 恋の残り香
──さて、どこへ向かうべきか。
目をこらすと、ここからでも高くそびえる安土の城が見える。
あれをよじ登ろうというのだ。
政宗殿と幸村様といえど、そう容易くはいかないだろう。
城の足下の敵を殲滅しても、あそこは種子島を操る魔王の城。内部に砲弾が隠されているはずだ。
「・・・目には目を。それしかないか。」
私はお館様の言っていた包囲網の構想を思い出した。
我々関東の勢力が陸から攻め、四国の勢力に対岸から囲わせる、と。
四国の毛利、長曽我部。
特に長曽我部の要塞『富嶽』。
この力は強大で、これに背後をとられれば織田の城も落ちるだろう、と。
富嶽の力を借りられれば、距離をとったうえで砲弾による攻撃を仕掛けられる。
「よし!」
西海の鬼・長曽我部元親に会いに行こう。
そして織田包囲網へ加わるよう説得するのだ。
聞けば海賊のような成りをしているらしいから、きっと一筋縄ではいかないだろうけど。
──さて、問題は、どうやって急ぎ背面の海へ行くかだ。
馬もないし、この足で長く走るのは怪我を悪化させる。
・・・ちくしょう、やはりこれしかないか・・・。
「ぎゃ────!!!!」
私はトラウマとなっている飛行忍具を使い、またこの空を飛んだのだ。
安土山を越えていく。
その上をぐらぐらと揺れる凧に掴まりながら、くるくると切り替わる視界に目を回してすごい速さで風を切った。
「あ───!! 止まって────!!」
叫んだところで止まらない。
止まれと言っても、本当に止まってしまっては困るのだが。