第4章 恋の残り香
昔から兄のように優しい佐助様。
ときに厳しく諭して下さる。
幸村様と同じくらい、大事な人だ。
「・・・あ、そうだ紫乃。竜の旦那とはいつから想い合う関係になってたの?」
「へ!? 想っ・・・!?」
「想い合ってるでしょ? さっきの様子を見てると。あの旦那が、惚れたって白状するなんて意外だよねー」
「・・・・。」
・・・・いや、惚れたとは言われていない。
遠回しにそれっぽいことを言われただけで、何か気持ちを言葉にされたわけではない。
でも、私もそうだ。
まだ何も奴に伝えていない。
「・・・あのっ・・・想い合っているように、見えますか・・・?」
私の気持ちは、そんなに目に見えるものだろうか。
確かにまだ何も返事をしていないのに、政宗殿があんなに自信満々に接してくるのは、私の気持ちがバレているからなのか?
なんて恥ずかしい・・・。
穴があったら入りたい・・・。
「・・・」
「・・・佐助様?」
「・・んもー・・・さっき竜の旦那に変な気起こさないようにって忠告されたばっかりなんだから、そんな顔しないでよ」
「・・・え? あ、あの・・・すみません?」
「まぁいいや。もう毒は抜けきったみたいだね。・・・お館様の構想してた織田包囲網、頼んだよ。紫乃」
「はい!」
私の体が元のように動くことを確認すると、佐助様は安土山へと向かわれた。
固く手当てを施して下さったおかげで、あまり痛みも感じない。