第3章 二人の主君
「了解。俺も紫乃の毒を消したらすぐに安土山へ向かう。竜の旦那。安土山への道中、うちの旦那に会うはずだ。・・・もう、さっきまでの泣きべそかいてた旦那じゃないから。合流してやってよ」
「・・・OK,上等だ」
・・・そうか。
幸村様と、政宗殿・・・。
二人が共闘すれば、どんなに強い力となることだろう。
・・・そうか、私は・・・
「おい武田の忍。そいつはテメェに預けるが、変な気は起こすんじゃねーぞ」
「分かってるって独眼竜。俺と紫乃は仕事仲間なんだから・・・・
・・・って、え? 何? お宅ら、もうそういう関係になってるわけ?」
出陣を前に面白おかしく話す政宗殿と佐助様であったが、私は、ただ呆然と佐助様の腕に収まっていた。
──気づいてしまったのだ。
私は、日ノ本のために、ただひとつ。
大きな大きな役目を果たすことができたということに。
強き紅の闘志をたぎらせ、炎の槍で相手を燃え尽くす幸村様。
月のような鋭い瞳に、蒼き竜の爪で敵に食い込んでいく政宗殿。
───二人が出会ったのは、偶然などではない。
この日ノ本の危機を救うには、二人の力が必要だったのだ。
私に主君が二人いることは、罪深いことなどではなかった。
二人が手を結び、織田の陣を滅すること。
そのために・・・
きっと私はそのために、ここにいたのだ。