第3章 二人の主君
だめだ。
こうして目の前に政宗殿の頭があって、腕に支えられて、肩にしがみついていると、どうやっても体が熱くなっていく。
病気なのではないかというほど動悸がする。
こんなに近くで彼に触れているのは、初めてだ。
「毒は抜けたか?」
「ああ、体は動かずとも、意識ははっきりしてきた」
「OK,じゃあ後は、月見のついでに、俺が魔王を倒すのを見てるんだな」
・・・そうだろうな。
こうなっては、私はもう同行などできない。
「政宗様!!」
森の方から馬に乗ってやってきたのは、後から甲斐を発った片倉殿だった。
伊達の軍勢を率いていたはずだが、どうやら今は一人のようだ。
彼は、政宗殿の背にもたれている私を見ると、眉をひそめた。
「おう小十郎」
「政宗様! ご無事でしたか! ・・・その、紫乃を背に担がれて・・・どうかなさったのですか?」
「なんてことはねぇ。ちょいとはしゃぎすぎただけだ」
「下手を打ってしまった。・・・面目ない、片倉殿」