第3章 二人の主君
突然のことに思わず彼の首もとに腕を回した。
「そのままつかまってろよ」
「・・・あの、待っ・・・」
熱い。
この炎にあてられて、私の体温は熱くなっていた。
腕から伝わる政宗殿の体温も、いつも以上に熱い。
体が動かないのをいいことに、片手で体を支えてくれているその腕にすっかりと身を任せる。
なんて逞しい腕なんだ。
この腕も、胸の中も、しがみついている肩も。
こうして私なんぞが絡まったところでびくともしない。
──崩れ落ち始める寺の扉を、政宗殿は刀ひと振りで吹き飛ばした。
その瞬間に炎は裂けて、寺から外へと通じる道がぽっかりと出来上がる。
本当だ。
私を担いでここから出るくらい、彼にとっては造作もないことだったのだ。
炎から離れると、政宗殿は刀を納め、私のことを背に担ぎ直した。
「・・・すまない政宗殿。・・・片倉殿に代わり背を守ると言ったのに、守るどころか、こうして背に担がれてしまって・・・」
「ハッ、小十郎の代わりはアンタにゃ務まらねーよ」
それはそうだ。
ショックだったが、仕方のないことだ。
情けなくて、目の前の広い肩に顔をうずめた。
「・・・でも、小十郎にも、アンタの代わりは務まらねぇ」
「・・・え・・・」
─ドクン─