第3章 二人の主君
ずっと知らずにいた気持ちが私の中に溢れだしていた。
こんな気持ちは初めてだ。
政宗殿が前へと進むなら、私はここに取り残されてもいい。
それで平気だと思っていたのに。
でも、今の私はきっと、全然平気なんかじゃない。
きっとこの背中が私から離れていったら、この身が張り裂けそうなくらいに苦しいはずだ。
寂しくて悲しい。
本当はもっと、そばにいたい。
「政宗殿っ・・・私は・・・私は、政宗殿のことがっ・・・」
──政宗殿のことが、好きなんだ。
「それ以上言うんじゃねぇ。」
「・・・えっ・・・?」
しかし、私の決死の想いを告げることを、彼は許さなかった。
その代わりに、この背中に手を添えて私の体を起こし始める。
「政宗殿・・・?」
「その続きは、魔王を倒した後でいくらでも聞いてやるぜ」
すると有無を言わさずに、彼の力強い腕は、私の体を持ち上げた。
「わっ・・・」
彼は私の背と足を持ってこの体を軽々と抱えあげる。