第3章 二人の主君
こうしている間にも、炎は燃え広がっている。
私は支えのためにもたれていた彼の腕から身を離す。
するとすぐにこの体は立っていられずに崩れ落ちた。
「おいっ・・・」
「・・・おそらく私は、しばらく動けないっ・・・。しかし心配には及ばぬ、自力でここから出るから、先に行っててくれっ・・・」
「何言ってやがる。アンタを担いでここから出るくらいわけねぇんだよ」
「・・・ともに出たところで、私は足手まといだ。・・・早くっ・・・」
これ以上、政宗殿の邪魔をしたくない。
守られてばかりいたくない。
彼のために何もできないのなら、せめて、もうここで見棄てられたほうがマシだ。
「すまない、政宗殿・・・・・私は・・・」
・・・ここで、あのときの返事をしなければ。
もう最後になるかもしれないから。
─『アンタはどうなんだ?・・・紫乃』─
ああ、政宗殿。
もう気付かぬフリは、できそうにない。
もし、今私がお前に対して感じている心が、お前の私に対する心と、同じならば。
この心がお前の心と違わぬというのならば。
──こんなに嬉しいことはない。