第3章 二人の主君
「さあ、そろそろ宴も終わりにしましょう。・・・お別れです、独眼竜」
─明智がニヤリと笑った瞬間、突然目の前が真っ暗になった。
本能寺の扉が閉められたのである。
「!?」
そして次の瞬間、二人だけとなった本能寺に火が放たれた。
「・・・チッ、寺ごと俺たちを丸焼きにするつもりかよっ・・」
「・・・政宗殿っ・・・」
あっという間に、あたりは炎に包まれた。
傷口の熱でただでさえ気を失ってしまいそうなところへ、炎の熱気に触れるとさらに体温が上がっていく。
汗が止まらない。
このままじゃ意識も途切れてしまう。
「おい紫乃! 目ぇ覚ましやがれ! こんなとこで寝てんじゃねーぞ!」
「・・あ、ああっ・・・」
私は力を振り絞り、調合して持っていた毒消しを口に含んだ。
毒が消せることに政宗殿は安堵した表情を見せたが、この毒消しは、体内に染み渡り効果が出るまでに時間がかかる。
私が動けるようになるのを待っていたら、この寺は燃え尽きてしまうだろう。
もうだめだ。
これ以上は、私は、政宗殿の足でまといだ。
「・・・政宗殿」
「おう、立てるか。丸焼きになっちまう前にここを出るぜ」
「・・・置いていけ」
「・・・あぁ?」