第3章 二人の主君
「ぐはっ・・・!!」
避けきれずに、矢が一本、太ももをえぐった。
「紫乃!」
明智を相手にしていた政宗殿も、私が射られたのを見るとこちらへ駆け寄ってきた。
大丈夫、このくらい平気だ。
なんてことない傷だ。
森蘭丸め、子供だと思って油断した。
「だ、大丈夫だ政宗殿」
「チッ・・・あの餓鬼っ・・・!」
政宗殿は一時的に狙いを明智から森蘭丸に変え、鋭い眼光で奴を睨む。
するとその視線だけで、森蘭丸は凍りついたように動けなくなり、大声を出しながら逃げていった。
「待ちやがれ!!」
・・・おかしい。
足をかすめただけの傷口が、どうしようもなく熱い。
そこからじわじわと、体全体の力を奪われていく。
・・・なんだこれ。
意識も遠くなりそうだ。
これしきの傷で、なぜ・・・。
「オイ! 大丈夫か!?」
「・・・っだ、大丈夫っ・・・」
ついには膝をついて崩れ落ちる。
政宗殿が支えのために手を貸してくれたが、それに掴まらなければ立っていることすらできなかった。
私の様子を見て、明智はクスクスと笑っている。
「蘭丸の毒の矢が効いているようですね。時間が経てば経つほど、あなたの命を削っていきますよ。」
毒かっ・・・どうりで・・・
ちくしょう、あのとき餓鬼の首をはねていればっ・・・
なんでこう、私は詰めが甘いんだっ・・・
これでは足手まといになる。