第3章 二人の主君
「・・・仕方ないですねぇ、蘭丸。加勢致しましょうか。」
「おい明智! テメェの相手はこの俺だ!」
明智は政宗殿に任せておけば大丈夫だ。
あんな変態野郎より、政宗殿の方が何倍も強い。
さっさとこの餓鬼の息の根を止めてしまおう。
「死ね! 森蘭丸!」
かすが殿の分まで、謙信殿の仇だ。
私はそう思って、奴めがけて最後の刃を放った。
──そのとき。
「わああ! ごめんなさい! お姉さん! もう蘭丸、こんなことしないっ!」
蘭丸は泣きじゃくり、弓から手を放して、降参の姿勢をとった。
「・・っ・・」
手が勝手に動いていた。
真っ直ぐ奴の首をはねようとしていた飛び刀を、私は軌道を変えて奴から逸らした。
この子供は降参している。
・・・斬れない。
「引っ掛かった引っ掛かったぁ♪」
「!?」
しかしその瞬間、奴は無防備な私の懐をめがけて、矢を放ってきたのだった。