第1章 奥州に忍ぶ
「・・・独眼竜は、幸村様のことをどう見ておられるのか」
伊達軍へ入れてくれなどとは何度懇願しようと無駄なことだろうから、私はただただ知りたいことのみを聞いてみることにした。
もっと独眼竜のことを知って、何を考えているのか聞き出さなければ。
「へぇ、ずいぶんと真田幸村に入れ込んでるみてぇじゃねーか。アンタ俺にjealousyでも燃やしてるってのか?」
「なっ・・・馬鹿にするな! 質問に答えろ!」
「・・・アイツは熱いsoulだけでこの爪に食いついてきやがる。あんな槍を振るう奴は見たことねぇ」
「・・・独眼竜・・・」
幸村様と同じように、独眼竜も認めている。
・・・なぜだろう、幸村様のことを話すこの男の目は、闘志に溢れていきいきとしている。
「・・・アンタ、真田幸村の何だ?ただの忍にしてはずいぶんとベタ惚れじゃねぇか」
奴はそう言ってケラケラと嘲笑った。
「幸村様は、幼少より共に育ち、共に励み、そして今は敬うべき若き主君だ。お前が想像するような薄っぺらい関係ではない!」
「アンタにとっちゃあのピュアな野郎が主君、てわけか。・・・そりゃ面白れぇこと聞いちまったな」
なにやらニヤリと口の端をつり上げているが、何も面白いことなどない。
私が幸村様に、今も昔もこれからも、主君としてお仕えするだけ。
そう言っただけだ。
何がおかしい。
「おい小十郎、この忍、しばらくここに置いとこうじゃねーか」
──え?
置いておく?
今、私を伊達軍の中に置いてくれると言ったのか?
本当に?