第1章 奥州に忍ぶ
「早朝の訪問失礼致す!昨日の無礼、心よりお詫び申し上げる!」
「ハッ、懲りねえなアンタ」
一夜明け、私はまた城へやってきた。
昨日と同じように門番に案内してもらい、同じく広間へ通されたところ。
鎧姿の独眼竜が正面にあぐらをかいて座っており、その側に片倉殿も腰をおろしている。
覚悟を決めて、そこへ割って入るようにして突っ込んでいった。
「そして片倉殿、昨夜はおかげさまでよく眠ることができた。礼を言わせていただく」
私の礼にバツが悪そうにするだけで返事をしない片倉殿に、独眼竜は怪訝な目を向ける。
「おい小十郎、なんの話だ」
「・・・昨夜城の近くでこの者を見かけ、寝床の手配を致しました。・・・敵の忍にうろつかれては、村の民が心配でございますゆえ・・・」
「よく言うぜ小十郎」
ふん。
独眼竜とは違って片倉殿はお優しいのだ。
普段は独眼竜に敵が寄り付かぬよう牽制するため、わざと厳しく振舞っているのだろう。
私も長く、いずれ主君となられる幸村様のお側にいるからわかる。
側に付き従える者の在るべき姿というのが、どういうものなのか。
片倉殿が信頼をおき、そして幸村様が好敵手とお認めになっている、この伊達政宗という男・・・。
一体どんな人なのだろう。