第3章 二人の主君
まだ本能寺の内にいる私たちは、月を背に立ち淀む明智光秀に斬りかかんと構えをとった。
政宗殿が奴めがけて走り出したのと同時に、私も同じように明智の懐へ間合いを詰める。
・・・奴は不気味に笑うだけ。
「!?」
すると、本能寺の扉にさしかかった瞬間。
上から私たちめがけ、何本もの矢が飛んできた。
「引っ掛かったなぁ♪」
あの子供っ・・・
織田一味の森蘭丸だ。
「邪魔すんじゃねぇ糞ガキッ!」
政宗殿は自分に降りかかる全ての矢を真っ二つに斬り捨てた。
私もどうにか避けきる。
「政宗殿。あの餓鬼、濃姫とともに謙信殿を討ったならず者・森蘭丸だ。子供だからといって手加減する必要はない。私が殺る」
「頼んだぜ」
子供に狙いを定めて、距離をとったまま容赦なく飛び刀で囲いこむ。
「わっ、わあっ、ちょっとっ!」
矢を構える暇などないくらいに責めた。
足下、顔、心臓、首。
次々にギリギリをかすめていく刃に、森蘭丸は涙目になっていく。
「わっ、ちょっ、待ってお姉さん!!」
私は冷徹に、奴の言葉には耳を貸さず、刀を振り続けた。