第3章 二人の主君
政宗殿が最後の兵を倒すために刀を振るうと、衝撃でその重い扉はすんなりと開いた。
「織田信長!!もう逃げ場はねえぜ!!」
政宗殿は雄叫びとともに、その扉の中へと押し入った。
───しかし、その雄叫びは、静かな本殿に響き渡るだけだった。
このもぬけの殻となった本能寺には、まるで人の気配がない。
「政宗殿、本能寺はやはり何かおかしい。ここは引き返して伊達や武田と合流しよう。嫌な予感がするのだ。」
「・・・仕方ねぇな。チッ、魔王の野郎・・・この俺をおちょくりやがって・・・。こんな寺に誘き出してなに考えてやがるんだ。」
本能寺を出る、そう私たちの意見は合致し、本殿から出ようとした。
─そのときだった。
「まんまとひっかかりましたね。独眼竜」
「「!?」」
本殿の外から聞こえたその声は、おぞましく卑しい、明智光秀のものだった。
気味の悪いほどの佇まい。
政宗殿はその姿を見た瞬間、怒りの表情を露にした。
そしてそれは私も同じ。
こやつは、卑怯な手でお館様を討とうした、許せぬ輩。
「明智光秀っ・・・よくもノコノコと俺の前に現れやがったなっ・・・!」
刀を構えた。
しかし明智光秀は月を背に笑っている。
怪しく光る今宵の月が、奴の背負う大鎌の刃に反射した。
「さあ、宴と参りましょう。・・・死んでください、この本能寺とともに」