第3章 二人の主君
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すっかり夜が更けた。
森を抜けた先に、潜むようにある敷地。
たどり着いたそこには厳かな構えの寺が佇んでいた。
これが本能寺・・・。
ピリピリと張りつめた、痛いほどの空気。
その中を余裕ながらも険しい表情で、政宗殿は進んできた。
「政宗殿。先に行かれよ」
「なんだ?ビビッちまったのか?」
「まさか!・・・片倉殿がいないのだから、私が背を守る」
「・・・OK,頼んだぜ」
政宗殿は刀を抜く。
私もその背中を守らんと、飛び刀を抜いて構え、彼が動き出すのを待った。
・・・しかし、嫌な予感がするのだ。
静かすぎる。
本当にここに、あの凶悪な第六天魔王・織田信長がいるのだろうか。
「行くぜ紫乃! しっかりついてきな!」
「無論!」
政宗殿は一気に駆け出した。
敷地内への門をくぐった瞬間、四方から織田の兵たちが斬りかかってきた。
政宗殿は次々に一本の爪で兵をなぎ倒し、後ろから彼の背を狙う兵は私が斬り払っていく。
静かなこの敷地にも、どこに潜んでいたのか次から次へと兵が止まずに寄ってくる。
しかし、一向に織田信長は姿を見せない。
「どこにいやがる! 出てきやがれ!!」
政宗殿に倒されていく兵も、まるで彼を倒さんとする意志が感じられない。
まるで己を捨て駒とでも自負しているような・・・。
「政宗殿!!あの寺だ!」
固く扉が閉じられた本殿が、兵をなぎ倒してきた私たちの目の前に現れた。
織田信長は、ここに・・・?