第3章 二人の主君
なんなんだっ・・・
なんでいきなりこうなった!?
何もきっかけはなかったし、二人きりとはいえ惚れられるような態度もとっていない。
こんなことを言われても、私は困るだけだっ・・・
「まあいい、行くぜ。俺の馬に乗りな」
「いい! 自分の足で歩ける!」
「ハッ、素直じゃねーな。ま、じゃじゃ馬は馬にゃ乗らねーか」
会話の調子が徐々にいつもの感じに戻りつつあることに安堵した。
あの甘ったるい空気のまま本能寺になど行けぬ。
気を引き締めて行かなければ。
色だの恋だの、そんなものを戦場に持ち込んだら、きっと己の足枷になってしまう。
政宗殿も血迷ったことは忘れ、魔王を倒すことのみに集中すれば良い。
─『アンタはどうなんだ?・・・紫乃』─
先程の、あんなのは、忘れる。
聞かなかったことにする。
私は考えることをやめた。
自分の心に、蓋をするように。