第3章 二人の主君
「馬鹿を言うな! 私は幸村様を主君としてずっと共に鍛練してきたのだ。色恋だの、そんな感情を持たれるようなことは身に覚えがない。そのような薄っぺらい関係ではないと言っただろう。」
「・・・薄っぺらい、ねぇ・・・」
すると、政宗殿は、私の手をとった。
─ドクン─
振り払おうとしても、振り払えない。
「・・・な、なんだっ・・・」
「じゃあ俺のことも、薄っぺらいって言いてぇのか?」
ど、どういう意味だ?
・・・いや、意味なら分かる・・・
・・・私はそこまで馬鹿なわけではない。
この男の熱い手、この真剣な眼差し。
質問の意図。
"薄っぺらい"の意味。
・・・・分からぬわけではない。
政宗殿の言いたいことは・・・つまりその・・・信じがたいが、なんとなく、察しがついている。
その上で、私に答えを求めていることも分かっている。
しかしそれは、私には、まるで心の準備ができていなかったこと。
考えたこともなかったことだ。
だって、今から戦に行こうという二人には、あまりに不釣り合いな感情だから。
─ドクン─
─ドクン─
嘘だ・・・こんなっ・・・
「アンタはどうなんだ。・・・紫乃」
答えられるわけない。
この熱い瞳に。