第3章 二人の主君
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馬が癒えるまでのしばしの休息。
馬には薬草をすりつぶして塗り込んでやった。
ついでに火を起こし、山の作物を適当に採って焼く。
政宗殿は木にもたれ掛かり腰を下ろすと、働く私を見ているだけだった。
「アンタがいると便利だな。足手まといになるだけかと思ってたぜ」
「・・・相変わらず失礼だな。でもいい、さすがにもう慣れた。ほら、食べろ」
いただきますも言わずに私の手から山菜を受け取ると、すぐに口に運び始める。
私も奴が食べたのを確認すると、自分も口に運んだ。
もくもくと食べているせいか、しばらく静寂が続いた。
「・・・政宗殿」
「あぁ? なんだ」
「・・・し、静かだな」
「アンタが黙っちまったからな」
「・・・い、今頃、片倉殿はどこらへんを走っているのだろうな」
「さあな」
こんな風に二人きりになったのは初めてで、何やら何かを話さねばならぬ心持ちになる。
幸村様といるときはそんなことないのに、なぜこの男と二人だとこんなにソワソワしてしまうのだろう。
「紫乃」
「なっ、なんだ」
不自然に声を裏返した私に首をかしげながら、政宗殿は質問を続けた。