第2章 ニンギョ×ノ×ヒトミ
もし人魚を見かけたら貴方達はどうするのだろう?
捕まえて高値で売り捌く?監禁する?
尾鰭を切り落とし鱗を削いで爪を剥がして血を吸い取って、痛みで流す涙を瓶に詰めて眼球をくり抜いて品物として売り捌いてしまうのかしら?
※※※
ずずっと珈琲を啜りながら新聞に目を通すと一面には二箇所の美術館が同時襲撃されたと言う記事。警備員は全員が無残に殺され、ネチア美術館の展示品は殆どが盗まれていて、ワイハー美術館は人魚の絵画のみが盗まれていた。管理会社も全滅、とも記事にされている。
『皆、上手くやったみたいだね』
犯行の痕跡は一切残されておらず犯人も手掛かり無し。素晴らしい手際だと感心しながら、また珈琲を啜る。
『ネチア美術館の方は殆どが盗まれ………大きな物もあるのにどうやって持ち出したんだろう?そんな事が出来そうな能力者って居なかった様な…』
と先日の事を思い返してみると知らない人物が何人か居たのを思い出す。
『眼鏡の女の子と…長髪のおチビちゃん…包帯男は知らないなぁ…その三名がそれ系の能力者なのかな』
適当に自己完結したところで珈琲は空になり、新聞を畳んで机に放り投げる。ふと人の気配を感じて急いで髪の毛を結い纏めフードを深く被り口元にヴェールを付ける。
-チリン-
音も無く古びた木製の扉が開き鈴の音だけが店内に響き渡る。
「居るか?」
『…フェイタン!』
「居るならちゃんと返事するよ」
『声かけたじゃない。それよりも…戻り早くない?』
顎に手を当てて小首を傾げる仕草をするが素顔の見えない妖しげな格好だと可愛いもクソもないと思いながら溜息を吐いて番傘を差し出す。
『………?』
「折れた」
『え』
「修理。急いで戻て来たね」
『あ、そゆ事ね』
番傘を受け取ると仕込刀を静かに抜く。その洗練された動作がとても艶めかしかった。
※※※
ポッキリと綺麗に折れた刃を色んな角度から見る。
『折れた部分の刃は?』
「そんなの置いてきたよ」
『じゃあ作り直しかな』
「時間、どのくらいかかるか?」
うーんと唸りながら考え込むとブツブツと指折り数える。その手は武器職人とは思えない程、白くキメが細く綺麗で。
『アレ、調達しないとだから…』