第9章 ニンギョ×ノ×オモイ
「もし助っ人に来られても多く殺せてラッキーって事で」
一同「賛成」
これまで沢山の戦闘を行なってきたハズなのだが、かすり傷一つ付いてなければ息切れなど疲れた様子も見られない。
「多分この扉も敵の能力だ。さっきチェリーが攫われた時といい…空間を司る念能力は相手にとって有利だから、くれぐれも油断しない様に」
「間違っても誰一人として生かすな」
一同「了解」
※※※
ふわふわと風が…風に踊る髪の毛が少し冷えた頬を撫でる。暗い瞼に薄らと光が差し込んで潮風が運んで来る香りは海の匂いと………血の匂い。
-すぅ…-
『血の………匂い…』
「やぁ、やっと起きたかい?僕のプリンセス」
『!』
目を覚ますと目いっぱいに嫌いな人の顔。動こうとしても拘束されてる身体は動かない。周りを見渡せば地平線の見える海。空は太陽が昇りつつある紫のグラデーション。
「もうすぐ日が昇る。そしたらもっと素晴らしい景色をプレゼント出来るよ…と話込んでいたら明るくなってきたね」
さぁ行こう、と拘束されたまま抱えられると飛び込み台的な所に移動する。地平線から顔を出す太陽はとても美しいのに…何故かそれを美しいとは思えず嫌な汗が背筋を流れる。
「ご覧、下を」
『…下…?』
まるで何かを囲む様にぐるぐると泳ぎ回る大量の鮫。何を囲っているのか…一隻の木造ボート。
『!?みんな!』
「そう…盗賊の連中さ。奴等強くてさぁ…僕の最強の部下十人も死んじゃって残るは三人」
『みんな…』
「攻めてきたのは九人。多少手傷は負わせたものの僕の部下はあっさり殺された…でも君を盾にしたら本当に弱くて…神経毒で麻痺させて捕獲に成功」
『酷い…』
「残りのメンバーも君を使えば簡単だったよ」
ニヒルな笑みがチェリーを見下ろす。
「すぐ側に控えてる秘書の能力で連中の存在はまだ鮫には見えてないが…血の匂いですぐ側に餌があるのは分かってるだろう」
『だめ!やめて!』
「察しがいいね…バール」
「はい」
『やめてよーっ』
もっとアタシに力があれば。もっともっと強ければ。これ以上アタシの為に皆に傷付いて欲しくないのに。無力なアタシは皆を傷付ける。
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